期待値の計算方法|ギャンブルの控除率と確率を解説

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控除率とは何か──ギャンブルに「場の取り分」がある理由

公営ギャンブルでは、賭け金の全額が的中者に還元されるわけではない。売上の一定割合が運営側に差し引かれる。この差し引かれる割合を控除率と呼ぶ。

主な公営ギャンブルの控除率は以下の通りだ。

種目 控除率 理論上の回収率
競馬(単勝・複勝) 約20% 80%
競馬(3連単) 約27.5% 72.5%
競艇 25% 75%
オートレース 30% 70%
競輪 約25% 75%

控除率25%の競艇では、全選手に均等に賭けた場合の期待回収率は75%。オートレースは控除率30%で、理論回収率は70%とさらに重い。これは全レース・全選手に分散して賭け続けると、長期的に投資額の25〜30%を失うことを意味する。

では、なぜ均等賭けの回収率が100%にならないのか。競艇を例に計算してみよう。

あるレースの総売上が1,000万円だとする。控除率25%が差し引かれ、払戻原資は750万円。全6艇のオッズは、それぞれの売上分布に基づいて決まる。たとえば1号艇に400万円、2号艇に200万円、3号艇に150万円…と賭けられた場合、各艇のオッズは以下のようになる。

・1号艇:750万 ÷ 400万 = 1.875倍

・2号艇:750万 ÷ 200万 = 3.75倍

・3号艇:750万 ÷ 150万 = 5.0倍

ここで各艇のオッズから「暗示確率」(1 ÷ オッズ)を計算し、全艇分を合計すると100%にはならない。

1/1.875 + 1/3.75 + 1/5.0 + … ≒ 133%

この100%を超えた33%分が、控除率の影響だ。暗示確率の合計が100%を超えるため、全艇に均等に賭けても必ず損をする構造になっている。この「オーバーラウンド」の理解が、期待値ベッティングの出発点である。

期待値の数学──なぜEV>1.0が勝ちの条件なのか

期待値の正確な定義と計算式

期待値(EV: Expected Value)とは、ある賭けを「無限回繰り返したとき」の1回あたりの平均リターンだ。数学的な定義は以下の通り。

EV = 勝つ確率 × 勝ったときのリターン + 負ける確率 × 負けたときのリターン

賭け金を1単位として計算すると、

EV = P × オッズ + (1 – P) × 0 = P × オッズ

ここでPは「その選手が勝つ真の確率」、オッズは「的中時の払戻倍率」だ。負けたときのリターンは0なので、式はシンプルにP × オッズとなる。

具体例で考えよう。ある選手の勝つ確率が30%で、オッズが4.0倍の場合、

EV = 0.30 × 4.0 = 1.20

100円賭けるごとに期待リターンが120円。つまり長期的には20%の利益が見込める賭けだ。

EV=1.0は「ゼロサム」、EV>1.0は「プラスサム」

EVの値が意味するところを整理する。

EV = 1.0:長期的に賭け金と同額が戻る。利益も損失もゼロ。均衡状態

EV > 1.0:長期的に賭け金以上が戻る。プラスサムの賭け。利益が出る

EV < 1.0:長期的に賭け金を下回るリターン。マイナスサムの賭け。損失が出る

控除率が存在する公営ギャンブルでは、全レースの平均EVは必ず1.0未満になる。競艇なら0.75、オートレースなら0.70。しかし、これは「全レースの平均」の話だ。個別のレースに目を向ければ、EVが1.0を超える賭けが存在する。

それらのEV>1.0の賭けだけを選び続けることが、控除率を超えるための数学的に唯一の方法である。

控除率を考慮した損益分岐点

EVの計算式で注意すべきは、「P(勝つ確率)」が真の確率でなければ意味がないことだ。問題は、真の確率は誰にもわからないという点にある。

そこで使うのが「モデル予測確率」だ。AIモデルが過去のデータから学習した予測確率をPとして代入する。モデルの精度が高ければ、このPは真の確率に近い値を示す。

NAGI AIの場合、11,607レースのテストデータで以下の結果が確認されている。

・全レース均等賭け:ROI 93.0%(EV平均 < 1.0)

・EV ≥ 1.0フィルタ:ROI 129.7%(5,185レース)

・EV ≥ 1.5フィルタ:ROI 199.6%(882レース)

モデルがEV ≥ 1.0と判定したレースの実際のROIが129.7%であったことは、モデルの確率推定が一定以上の精度を持つことの実証だ。競艇の回収率改善戦略ではこのフィルタの実践的な使い方を解説している。

オッズ暗示確率の計算──市場の「本音」を逆算する

暗示確率 = 1 ÷ オッズ

オッズから市場が「この選手の勝率をどう見ているか」を逆算できる。これがオッズ暗示確率だ。

暗示確率 = 1 ÷ オッズ

オッズ2.0倍なら暗示確率は50%、オッズ5.0倍なら20%、オッズ10.0倍なら10%。市場(=購入者全体)がその選手にどの程度の勝率を見込んでいるかを、この計算で数値化できる。

控除率を除去した「真の市場評価」の計算方法

ただし、暗示確率をそのまま信じてはならない。先述の通り、全選手の暗示確率を合計すると100%を超える(競艇で約133%、オートレースで約143%)。この超過分は控除率の影響であり、各選手の暗示確率から差し引く必要がある。

補正の方法は単純だ。各選手の暗示確率を合計値で割る。

補正後確率 = 暗示確率 ÷ 暗示確率の合計

たとえば競艇で暗示確率の合計が133%の場合、オッズ4.0倍(暗示確率25%)の選手の補正後確率は、

25% ÷ 133% ≒ 18.8%

つまり市場は、この選手の勝率を約19%と評価していることになる。25%ではなく19%。この差が控除率の影響だ。

具体例: オッズ4.0倍 → 暗示確率25% → 補正後約19%

もう一つ、全6艇の具体例で計算してみよう。

艇番 オッズ 暗示確率 補正後確率
1号艇 1.8倍 55.6% 41.8%
2号艇 5.0倍 20.0% 15.0%
3号艇 7.0倍 14.3% 10.7%
4号艇 10.0倍 10.0% 7.5%
5号艇 15.0倍 6.7% 5.0%
6号艇 4.0倍 25.0% 18.8%
合計 131.6% 98.8%(≒100%)

補正後の確率は合計でほぼ100%になる。これが「市場が本当に見積もっている各艇の勝率」だ。

そして期待値ベッティングの核心はここにある。もし自分の予測モデル(またはAI)が「6号艇の勝率は25%」と判断しているなら、市場評価18.8%との差は6.2ポイント。オッズ4.0倍でEV = 0.25 × 4.0 = 1.00。ほぼ損益分岐だが、モデルの確率がさらに高ければEV>1.0の利益機会になる。

なぜ「市場の歪み」が発生するのか

EV>1.0の賭けが存在するためには、「市場の評価」と「真の勝率」にズレがなければならない。なぜこのズレが発生するのか。

本命偏重バイアス(人気艇にオッズが偏る)

公営ギャンブルで最もよく観測されるバイアスが、本命偏重バイアス(Favourite-Longshot Bias)だ。購入者は「勝ちやすそうな選手」に過剰に集中する傾向がある。

競艇の1号艇がその典型例だ。勝率55.1%の1号艇に購入者が殺到し、オッズが1.5〜1.7倍に押し下げられる。EV = 0.551 × 1.6 = 0.88。期待値は1.0未満で、長期的には12%の損失になる。一方、この人気の偏りにより、他のコースのオッズは相対的に高くなる。2〜4コースに実力のある選手がいる場合、期待値がプラスになるケースが生まれる。

競艇のデータ分析でこのバイアスの影響を詳しく解説している。

直近成績バイアス(最近の結果に過剰反応)

購入者は、選手の直近1〜2走の成績に過剰に反応する傾向がある。前走で1着を取った選手は過大評価され、前走で大敗した選手は過小評価される。

しかし、統計的には1走分の結果のサンプルサイズは1だ。1回の結果で実力を判断するのは、コインを1回投げて「このコインは表しか出ない」と結論するのと同じ程度の信頼性しかない。

このバイアスにより、前走凡走の実力者にオッズが過剰につくケースが発生する。これが期待値を生む。

万舟偏重バイアス(大穴に非合理的な賭け)

本命偏重と逆のパターンもある。一部の購入者は「万舟(大穴)」を当てたいという心理から、勝率が極めて低い艇にも非合理的に賭ける。

6号艇の勝率3%に対して、「もしかしたら」で賭ける人がいると、6号艇のオッズは本来の妥当値(33.3倍)より低く押し下げられる。オッズ20倍になっていたら、EV = 0.03 × 20 = 0.60。大幅にマイナスの賭けだ。

万舟狙いの購入者が多いほど、穴艇のオッズは本来の妥当値よりも低くなり、期待値がマイナスに振れる。大穴を当てたときの快感は大きいが、数学的にはこれは系統的に損をする行動パターンだ。

大数の法則──長期でEVに収束する数学的保証

期待値がプラスの賭けを見つけたとして、本当に長期的には利益が出るのか。その数学的保証を与えるのが大数の法則だ。

大数の法則とは、「独立した試行を繰り返すほど、結果の平均は理論上の期待値に近づく」という定理だ。コインを投げ続ければ表の比率は50%に近づき、サイコロを投げ続ければ各目の出現率は16.7%に近づく。

賭けに適用すると、EV1.2の賭けを繰り返せば、実際のROIは120%に近づいていくことになる。ただし、収束にはある程度のレース数が必要だ。

レース数 結果のブレ幅(目安) 実感
10レース ROI 0%〜300% 運次第。判断材料にならない
50レース ROI 60%〜180% 傾向は見えるが信頼性は低い
100レース ROI 80%〜160% ある程度の信頼性が出てくる
500レース ROI 100%〜140% 戦略の有効性を評価できる
1,000レース以上 ROI 110%〜130% 期待値への収束が明確になる

NAGI AIのテストデータが11,607レース、TODOROKI AIが7,528レースという大規模な検証を行っているのは、大数の法則により結果の信頼性を担保するためだ。10レースや50レースの結果は「たまたま」の可能性があるが、数千レース規模の結果は統計的に有意と言える。

実践において重要なのは以下の点だ。

短期の連敗で戦略を放棄しない。EV1.2の賭けでも、5連敗は十分に起こり得る(確率約33%)

短期の連勝で過信しない。5連勝も同様に起こり得るが、長期のEVとは別問題だ

資金管理を徹底する。大数の法則が機能するまでに必要な試行回数を耐えられるだけの資金を確保する

最低100レース以上の結果で戦略を評価する。それ以下のサンプルサイズでは、運と実力の区別がつかない

大数の法則は「長期的に勝てる」ことの数学的根拠だが、同時に「短期的には負ける可能性がある」ことも意味している。この両面を理解した上で実践に臨む必要がある。期待値ベッティング入門では、この原理をより平易に解説している。

まとめ──数学を味方にすれば控除率を超えられる

本記事で解説した数学的根拠を整理する。

概念 定義 実践上の意味
控除率 売上から差し引かれる運営の取り分 競艇25%、オートレース30%。均等賭けでは超えられない壁
期待値(EV) P × オッズ EV>1.0の賭けだけを選べば長期的にプラス
暗示確率 1 ÷ オッズ 市場が見積もっている勝率。控除率を補正して使う
市場の歪み 真の確率と暗示確率の乖離 バイアスが歪みを生み、EV>1.0の機会を作る
大数の法則 試行回数が増えるほど平均はEVに収束 短期は運、長期はEVが結果を決める

控除率25〜30%の壁は、感覚や直感では超えられない。しかし数学には、この壁を超えるための明確な道筋がある。

  1. 市場のオッズから暗示確率を逆算する
  2. 自分の予測(またはAI)と市場評価のギャップを見つける
  3. EV>1.0の賭けだけを選んで実行する
  4. 大数の法則が機能する十分なレース数を積み重ねる

NAGI AIは11,607レースの検証でEV1.0以上のROI129.7%を、TODOROKI AIは7,528レースの検証でEV1.0以上のROI124.9%を記録した。これらの数字は、数学的アプローチが控除率を超えられることの実証だ。

競艇の回収率改善オートレースの回収率改善では、それぞれの種目に特化した具体的な戦略を解説している。公営ギャンブル全体でのAI活用についてはこちらを参照してほしい。

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この記事を書いた人

養分のトリセツ編集部|投資詐欺・情報商材・悪質ビジネスから身を守るための情報を、金融庁・消費者庁・国民生活センターの公開資料に基づき発信。「絶対儲かる」「誰でも稼げる」を疑い、自分の頭で判断できる消費者を増やすことを目指します。具体的な相談先・対処事例も紹介。

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